さながら)” の例文
釣枝、立木たちき、岩組、波布なみぬの、浪板の如きはなはだしく不自然なる大道具おおどうぐさながら浮世絵における奥村政信おくむらまさのぶ鈴木春信すずきはるのぶらの美人画の背景にひとし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
俳優は皆奇異なるかつらと衣裳とのために身体の自由を失ひたるものの如く、台詞せりふの音声は晦渋かいじゅうにして変化に乏しきことさながら僧侶そうりょ読経どきょうを聞くのおもいありき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
明治維新以来東西両文明の接触は彼にのみ利多くして我に益なき事さながら硝子玉がらすだまを以て砂金に換へたる野蛮島の交易を見るに異ならず。真に笑ふべきなり
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)