めど)” の例文
アイヌの郷土細工の糸巻から、弟の着物と似合ひの色糸を見付けて、針のめどへ通した。それからいかにも物馴ものなれた調子でほころびをつくろひにかゝつた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
と泣声になり掻口説く女房の頭は低く垂れて、髷にさゝれし縫針のめどくはへし一条ひとすぢの糸ゆら/\と振ふにも、千〻に砕くる心の態の知られていとゞ可憫いぢらしきに、眼を瞑ぎ居し十兵衞は
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
身の分際を忘れてか、と泣き声になり掻き口説く女房のこうべは低く垂れて、まげにさされし縫針のめどくわえし一条ひとすじの糸ゆらゆらと振うにも、千々に砕くる心のさまの知られていとどいじらしきに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)