媚笑びしょう)” の例文
顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑びしょうたたえ、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫ねこなで声に似た甘ったるい声で
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おかね嬢はいささかの躊躇ちゅうちょもなく応諾し、かなり積極的な態度で、あでやかに媚笑びしょうし、すり寄って、彼の手を握った。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家来共や腰元共の居る席では自分の容貌に退け目を感じて自然不機嫌になったけれども、蘭燈らんとうの影ほのぐらい密室に這入り、夫人のいつに変らない艶冶えんや媚笑びしょうを眼の前にすれば
ると葉子の表情がにわかにほぐれて、けるような媚笑びしょうが浮かんで来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
買いかぶり節度もなく媚笑びしょうきちらして歩いたゆえ、犬は、かえって知己を得たものと誤解し、私を組みしやすしとみてとって、このような情ない結果に立ちいたったのであろうが、何事によらず
「悪に媚笑びしょうする事です。」
かすかな声 (新字新仮名) / 太宰治(著)