威嚇おどか)” の例文
嫉妬深い獣の習慣つねとして私と戯れている小猿達を見ると、彼は猛烈に岡焼きして気味の悪い声で吠え立てて威嚇おどかそうとするのであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それがようやく静まりかけた時に、虚子がまた腹いっぱいに横合から威嚇おどかした。自分の声は威嚇されるたびによろよろする。そうして小さくなる。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕があの脚本を書上げると直ぐに、彼奴あいつに取りかかってやったんだ。犯人は貴様だろう……って威嚇おどかし付けてやったら、一ペンに青くなっちゃってね。色々弁解しやがるんだ。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
威嚇おどかしや、そんなこと。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いくら貧乏の幽霊で威嚇おどかしたってその手に乗るものかという彼の気慨が、自然小林の上に働らきかけた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とチョッピリ威嚇おどかしてやったもんだが、毛唐の物分りの早いのには驚いたね。チョット別室で相談したと思う間もなく、シャンとした奴が五六人引返して来て、二千ポンドの札束を僕の前に突き出した。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「貴殿」と浪人は威嚇おどかすように言った。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
威嚇おどかしや、そんなこと。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たまに帰ろうとすると、兄達が寄ってたかって、「帰ると承知しないぞ」などと威嚇おどかしたものである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
威嚇おどかしや、そんなこと。」
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
草山の向うはすぐ大海原おおうなばらでどどんどどんと大きななみが人の世を威嚇おどかしに来る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旅行案内をほうり出して宗近君はずしんと畳を威嚇おどかして椽側えんがわへ出る。椽側には御誂向おあつらえむきに一脚の椅子いすが、人待ち顔に、しめっぽくえてある。連𧄍れんぎょうまばらなる花の間からとなの座敷が見える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その位よく知つてるなら、始めから威嚇おどかさなければいゝのに。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)