姨捨山おばすてやま)” の例文
姨捨山おばすてやまの月(わが心慰めかねつ更科さらしなや姨捨山に照る月を見て)ばかりが澄みのぼって夜がふけるにしたがい煩悶はんもんは加わっていった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ここにはただざっと姨捨山おばすてやまとよく似た話が、今でも東北地方にはあるということを述べて、どこまで似ているかを考えて見ることにしよう。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昔は老年になりてものの役に立たぬ人を無残にも山谷さんこくに捨てし地方もありきとぞ。信州の姨捨山おばすてやまはその遺跡となん聞えし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ぬしさへ命がけで入つてござつたといふところわしがやうな起居たちいも不自由な老寄としよりが一人居ては、怪しうないことはなからうわいの、それぢやけど、聞かつしやれ、姨捨山おばすてやまというて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
更級さらしな姨捨山おばすてやまの月ぞこれ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
月の名にたつ姨捨山おばすてやま
県歌 信濃の国 (新字新仮名) / 浅井洌(著)
姨捨山おばすてやまなどはその方であろうという人もあるが、大ていの場合には話をする人が、作ったものと見てよいようである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夏この滝の繁昌はんじょうな時分はかえって貴方、邪魔もので本宅の方へ参っております、秋からはこうやって棄てられたも同然、わたくし姨捨山おばすてやまに居ります気で巣守すもりをしますのでざいましてね、いいえ
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう思って気をつけていると、この二通りの話し方いがいに、日本にまたべつの親棄山があり、和歌で有名になっている信州更級さらしな姨捨山おばすてやまなども、その一つの残りの形であるような気がする。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だがな、お前は家附の娘だから、出てくことが出来ぬと謂えば、ナニ出て行くには及ばんから、床ずれがして寝返りも出来ない、この吾を、芳之助と二人でおぶって行って、姨捨山おばすてやまへ捨てるんだ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)