姑獲鳥うぶめ)” の例文
この時すすきの原の小松の蔭から、また嬰児あかんぼの泣き声がしたが、やがて早瀬の姑獲鳥うぶめのような姿が、芒を分けて歩いて来るのが見えた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ふん、難産の呻吟声うめきごえだ。はあ、御新姐ごしんぞうならしっけえ、姑獲鳥うぶめになって鳴くだあよ。もの、奥の小座敷の方で聞えべいがね。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……顔の前へ白い布をかけた、姑獲鳥うぶめのような女が抱いている子も、漢権守様のお手によって、やがては瞽婢にされるであろうよ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お妻は石炭くずで黒くなり、枝炭のごとく、すすけた姑獲鳥うぶめのありさまで、おはぐろどぶ暗夜やみに立ち、刎橋はねばしをしょんぼりと、嬰児あかんぼを抱いて小浜屋へ立帰る。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姑獲鳥うぶめ布柱ぬのばしらと盲人と、猩々との縦隊は声なく進み、その行く手の遥かのあなたには高くいかめしく聳えている、別櫓べつやぐらの方へうごめいて行った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おおきいのから小さいのから、その蒼白あおじろい筋のある、細ら長い、狐とも狸とも、姑獲鳥うぶめ、とも異体の知れぬ、中にも虫喰のござります葉の汚点しみは、かったいか、痘痕あばたの幽霊。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牡丹に立った白鷺になるよりも、人間は娑婆しゃばが恋しかんべいに、産で死んで、姑獲鳥うぶめになるわ。びしょびしょぶり闇暗くらやみに、若い女が青ざめて、腰の下さ血だらけで、あのこわれ屋の軒の上へ。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)