夫故それゆえ)” の例文
夫故それゆえ江戸には門戸を維持するあたはず始終田舎へ而已のみ飄泊ひょうはく致し候次第なり。『安政絶句』に相洩し候はあえて意あるにらず。唯游歴而已致し候故むことを得ず相洩し候儀に御座候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
惣吉成人ののち関取を頼んで旦那と私の敵を討たして下さい、証拠は富五郎の白状に依って手引をした者は富五郎、斬った者は一角と定まりました、夫故それゆえに今晩交遊庵に忍び入ります
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
目科はすきも有らせず「なに珈琲館を出たのは六時頃だッたがバチグノールに人殺ひとごろしが有たので隣室の方と共に其方そのほうへ廻ッて夫故それゆえ此通このとおり」と言開く、細君は顔色にて偽りならぬを悟りし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
仮令たとい君父くんぷの命たりとも毒薬調合はせぬのがおきて夫故それゆえ医者に相成る時は、其の師匠へ証文を差出さしいだすとる医に承りて承知致して居ります、何故なにゆえに拙者が毒を盛りましょう、毛頭覚えない事
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夫故それゆえまア知っていながら遅くなりました、多助さん、飛んだ事になりましたね
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)