夫人マダム)” の例文
「でも、ここへ来て、夫人マダムといえばおていさいはいいけれど、しょッ中、異人のお相手ですもの。——まるでチャブ屋の女将おかみだわ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
より以上に肥満し切ったその夫人マダム、酒番とトラック運転手と、愛すべき「小説フィクション」の apache と彼の gon-zesse。
令嬢マダマアゼルとか夫人マダムとか名につけて云ふ若い女、どれも先づ自身よりは容貌の好い独身の女を七八人も家に置いて居るおかみさんの身になつたなら
午後 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
マロニエの若葉に細かい陽光の雨がそそいでいるある日のこと、一人の令嬢マドモアゼル夫人マダムが、一人の日本婦人を誘って、軽い馬車をカラカラと走らせていた。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
長谷川道子も、友人の妻君も、電車に乗り合した令嬢ミスも、劇場の廊下で行き合う夫人マダムも、カフェーの女給仕ウェートレスも、年若くて或る種の容姿を具えている以上は、皆危険だった。
理想の女 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
外国の芝居なんか読んで、(ユー! 家庭破壊者ホームブレーカーよ!)なんて、夫人マダムに追い出される女なんて、どんなに嫌だろうと思っていましたのに、私自身いわれてしまったんですもの。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
に彼はなにがしの妻のやうに出行であるかず、くれがしの夫人マダムのやうに気儘きままならず、又は誰々たれだれの如く華美はでを好まず、強請事ねだりごとせず、しかもそれ等の人々より才もかたち立勝たちまさりて在りながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
どっちが touf-toufぼろじどうしゃ だかくらべて見てあげるから。なんだイ、髯なんか生やして。……それから、そっちの夫人マダム、君はさっき(このやりきれない pouce-pouceうばぐるま
失礼ですイズウィニーチェが、夫人マダム、私はまだちっともお話の内容がわからないんですが」
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
最初に晶子の手を握つて「おお夫人マダム」と言はれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
夫人マダムのお槙は、そういう間にも、ともすると見失いそうになる島崎の顔を、眼から離さないで、会話が終るとすぐに、彼のそばへ戻って来た。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人マダムの顔をちよいと見た。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と、美しい夫人マダムはいった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
夫人マダムのお槙の顔へ、もういっぺんマグネを与えたら、どんな表情をしているだろうと思って、お光さんや愚連隊の男たちは、止めどなく笑いを交換した。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)