天下あまくだ)” の例文
「拙者、今夜は、いかなる幸運か——吉祥天女きっしょうてんにょ天下あまくだったような気がして、とんと、気もそぞろになり申すよ。は、は、は、は、は」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いつもかまどのはいすみこなにまみれたみにくい下司女げすおんなではなくって、もう天人てんにん天下あまくだったかとおもうように気高けだかい、十五、六のうつくしいおひめさまでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おんあるじ、大いなる御威光ごいこう、大いなる御威勢ごいせいを以て天下あまくだり給い、土埃つちほこりになりたる人々の色身しきしんを、もとの霊魂アニマあわせてよみ返し給い、善人は天上の快楽けらくを受け
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
若く元気な生徒らの目にはどこかの別の世界から天下あまくだって来たような法学士、農学士、文学士の先生たちがシャツ一つになって校庭で猛烈な練習をリードした。
野球時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
正直な文学青年の秋田氏が、美神みゅうずが急に天下あまくだったように感激したのは当り前だった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ドッ、ドッ、ドッ、グワーン」それはまぎれもなく、高射砲隊の撃ちだした音だった。悠々と天下あまくだりながら、帝都の屋根を照らしていた光弾が、一瞬間にして、粉砕されてしまった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この河原のただ中へ天下あまくだったようだとでも申しましょうか。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)