大束おおたば)” の例文
彼は舌鼓したつづみをうって、案内者なしに妻と二人ふたり西を指して迦南カナンの地を探がす可く出かけた。牧師は玉川の近くで千歳村ちとせむらだと大束おおたばに教えてくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「なんだ、人の財布を預かっていると思って、いやに大束おおたばを決めるじゃないか——まアいいや、手拭一と筋で喧嘩にもなるめえ、素直に帰ろう」
近所で訊いてみようと四辺あたりを見まわすと、三十格好の女房が真っ赤な手をしながら井戸端で大束おおたば冬菜ふゆなを洗っていて、そのそばに七つ八つの男の児が立っていた。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが今日は暗闇で旗本六人が鼻をそがれた敵討というので同門から金を集めてくれたので、大分懐中ふところは温かいのだから、大束おおたばを極めて好きな酒が呑めるのであった。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
とお母さんは大束おおたばに出た。英語も長唄同様、習いさえすれば一通り出来るものと思っている。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「けッ、なにが伝兵衛、伝兵衛だ。大束おおたばな呼び方をしやアがって。……馬鹿にするねえ」
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お島は借金の言訳に、ぺこぺこしている男を見ると、そういって大束おおたば極込きめこんだ。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わらいごっちゃねえぜ。二十五りょうたァ、大束おおたばもうけたじゃねえか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
大束おおたばを言うな、駈落の身分じゃないか。幾干いくらだっけ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大束おおたばな事を言って、お静はソッと店中に眼を走らせました。近頃出来の店構えで何となく真新しい普請ですが、そのくせ妙に陰気で妙に手丈夫に出来ているのが、娘の繊弱デリケートな神経を圧迫します。
どうするのかと見ていると、とど助が大束おおたばなことを言い出した。
と団さんは万更冗談でもないようなことを大束おおたばに言った。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「人のことだと思って大束おおたばを極めるね」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)