大時代おおじだい)” の例文
極月ごくげつの十三日——極月などという言葉はこのごろ流行らないが、この話は極月十三日と大時代おおじだいに云った方が何だか釣り合いがいいようである。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
行平ゆきひらなどは今も大時代おおじだいの形であります。蓋物ふたもので黒地に白の打刷毛うちばけを施したものがありますが、他の窯には見当らない特色を示します。大中小とあります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
なに、大江山へ——いよいよ話が大時代おおじだいになった。でも、鬼のいない胆吹へひとつ乗込んでみよう、その棲所すみかのあとを調べてみるだけでも無用ではない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
顳顬こめかみ即功紙そっこうし張りて茶碗酒引かける流儀は小唄こうたの一ツも知らねば出来ぬことなるべく、藁人形わらにんぎょうに釘打つうしときまいり白無垢しろむくの衣裳に三枚歯の足駄あしだなんぞ物費ものいりを惜しまぬ心掛すでに大時代おおじだいなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「よせよ。どうも古い。大時代おおじだいだ。」詩人は、美濃の此のような多少の文才も愛しているし、また、こんな物語をひとりでこっそり書いている美濃の身の上を、不憫にも思うのだが、けれども
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
堂々空を圧する白堊の建築物と、美しく掃き清められたペーブメントと、凡て直線的な均整の中に、これは又ひどく大時代おおじだいな、赤い着物を着た酔っぱらいなんて、何となく気違いめいた対照であった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
聞いただけで大時代おおじだいの先生方の胸悪さを感じるて。
図のこなし方に大時代おおじだいの風があって、近頃の小器用な弱々しいものとは雲泥うんでいの差があります。雑器の一つではありますが、今描く漆絵うるしえとしては最も立派なものといえましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
に太い根竹を用い、縦に置いて必ず立つのを自慢とします。形が如何いかにも大時代おおじだいを想わせ、作りもしっかりして気品ある品であります。けだし団扇としては日本随一でありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)