大利根おおとね)” の例文
「四五日前、大利根おおとねすじへ寒鮒かんぶなを釣りに行くといって、フラリと出かけたまま、今日にいたるまで消息がございません」
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
去年の秋手賀沼てがぬままでドライヴしたついでに大利根おおとねの新橋まで行ってみた。利根川の河幅はこの橋の上流の所で著しく膨大ぼうだいして幅二キロメートル半ほどの沼地になっている。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そしてこの地方の——大利根おおとねのながれと、赤城あかぎおろしと、南は荒い海洋に接している下総境しもうさざかいの——坂東平野をしずかにながめ、ここにまだ、文化のおくれている粗野な人情と
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
向うは往来おうらい三叉みつまたになっておりまして、かたえは新利根しんとね大利根おおとねながれにて、おりしも空はどんよりと雨もよう、かすかに見ゆる田舎家いなかや盆灯籠ぼんどうろうの火もはや消えなんとし、往来ゆきゝ途絶とだえて物凄ものすご
大利根おおとねの水の、下総しもうさうしおがあって、坂東平野は幾たびも泥海に化し、幾千年のあいだ、富士の火山灰はそれを埋め——やがて幾世いくよをふるうちに、よしあしや雑木や蔓草つるくさがはびこって
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)