大凡おおよ)” の例文
そのとしの三月三日に桜田におお騒動のあった時であるから、その事を話したので、天下の治安と云うものは大凡おおよそ分るもので
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ナオミさんから貰ったんです。———もうそう云えば、僕がどうして此処に来ているか、大凡おおよそあなたはお察しになったと思いますが、………」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
試みに、大洋に含まれてゐる塩の総量の大凡おおよその見積りをつくつて見ると、大洋がすつかり乾いてしまつてその底に、塩の原素が残つたとすると、その塩のもとは地球の表面を
貞之助兄さんはこいさんがどんなことしてるか云うこと、誰にも聞かはらんかて大凡おおよそ察しはったんやわ。ああ云う人を
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と申すはその時に私の生活はカツ/\出来るか出来ないかとう位であるが、しかしドウかしたなら出来ないことはないと大凡おおよその見込みこみついて居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
どう贔屓目ひいきめに見ても人の注意を惹かずに済むとは考えられないのであったが、幸子も口には出さないで、夫が何を考えているのか大凡おおよそ察していた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その用件も大凡おおよそ分っているような気がしたが、矢張思った通り雪子と妙子の身柄に関しての問題であった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「なあに大凡おおよそは分っています。しかしこりゃあ要さん、私に云わせると、一体あなたが悪いんだね」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
容態を見て大凡おおよそ分っていたことであったが、彼女は炎天のみちあえぎ喘ぎ再び汗をいて戻って来ながら、たまに一日往復するさえこんなに大儀であるのにと思うと
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そうすれば自分が本当に可愛がることが出来るような気がするから、と云い、四十何歳と云う年の人を夫に持つのだとすれば、もうその人の立身の限度も大凡おおよそ見えていて
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
井谷は十二月になってからはぱったり催促して来なくなったが、事によると形勢の非なることを大凡おおよそ悟ったのかも知れないので、それならかえって都合がよい訳でもあった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一方の縁側の外にはこんもりとした植え込みがあって、その向うは板塀いたべいに囲われている。唯これだけの眼界では、この家が東京のどの辺にあたるのか、大凡おおよその見当すらわからなかった。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ですが河合さん、あなたの方にも大凡おおよ何処どこと云う心当りはないんですか?」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
十五のとしにカフエエの女給に出されていたこと、そして決して自分の住居を人に知らせようとしなかったことなどを考えれば、大凡おおよそどんな家庭であったかは誰にも想像がつくはずですから。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若い娘と云うものはたしなみとしてもそう云う返事を明瞭めいりょうに人前で云いはしない、自分に行く気があるかないかは大凡おおよそ素振でも分りそうなものだのに、と云ったことであったが、ほんとうは
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)