夜中よじゅう)” の例文
細いが床の間の上に乗せてあった。夫婦は夜中よじゅう灯火あかりけておく習慣がついているので、寝る時はいつでもしんを細目にして洋灯ランプをここへ上げた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下では何時いつ頃婆さんが眠るものか、……それとも夜中よじゅうああやって、やはり坐り通してあかすのかも知れないが、あくる朝起きて下へ降りて見る頃には、きっといつもの様子で
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
楯井さんの家では麦を夜中よじゅうかゝって煮る為めに、大きな鍋が少しばかり突込んだ薪の火にかけてあった。火は勢なくトロ/\と燃えていた。三人の子供は、もう寐静まっている。
惨事のあと (新字新仮名) / 素木しづ(著)
これは折角せっかく火炙ひあぶりも何も、見そこなった遺恨いこんだったかも知れない。さらにまた伝うる所によれば、悪魔はその時大歓喜のあまり、大きい書物にけながら、夜中よじゅう刑場に飛んでいたと云う。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夜中よじゅう、山はぼう/\と燃え
間島パルチザンの歌 (新字旧仮名) / 槙村浩(著)
夜中よじゅうごみ焼をしている人だちは、火影に顔をまっかに染めながら、長いレーキ(ごみさらい)で、火をつゝいたりごみをくべたりしていた。こんな所へ通りかゝると、楯井さんは
惨事のあと (新字新仮名) / 素木しづ(著)
昨宵ゆうべ夜中よじゅう枕の上で、ばちばち云う響を聞いた。これは近所にクラパム・ジャンクションと云う大停車場おおステーションのある御蔭おかげである。このジャンクションには一日のうちに、汽車が千いくつか集まってくる。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)