-
トップ
>
-
夏羽織
>
-
なつばおり
「あ、ちょっと待った八。それからもう一つ、あの日
道灌山へ、大徳屋徳兵衛は
夏羽織を着て来なかったか、それを訊いて来てくれ」
その中にて小波先生は
双子縞の
単衣に怪し気なる
夏羽織、
白足袋雪駄にて黒眼鏡をかけし
体、貸座敷の書記さんに見まがひたる。
さて
色氣拔きとなれば、
何うだらう。(そばに
置いてきぬことわりや
夏羽織)と
古俳句にもある。
「あ、一寸待つた八。それからもう一つ、あの日
道灌山へ、大徳屋徳兵衞は
夏羽織を着て來なかつたか、それを訊いて來てくれ」
久米君は手早く
夏羽織の
裾と
袂をからげるや否や身軽く鉄条綱の間をくぐって
向へ出てしまった。