壺装束つぼしょうぞく)” の例文
壺装束つぼしょうぞくといって頭の髪の上から上着をつけた、相当な身分の女たちや尼さんなども、群集の中に倒れかかるようになって見物していた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何枚かの黄金おうごんにかえた右馬の頭は路用もできたから、七日には立ちたまえ、壺装束つぼしょうぞくも明日はとどけてくれるからといったが、生絹は泣いていった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
目のあらいすだれが、入口にぶらさげてあるので、往来の容子ようすは仕事場にいても、よく見えた。清水きよみずへ通う往来は、さっきから、人通りが絶えない。金鼓こんくをかけた法師ほうしが通る。壺装束つぼしょうぞくをした女が通る。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みやこの女はまだ市女笠いちめがさかぶ壺装束つぼしょうぞくのままだったが、突然、貝ノ馬介がそばに寄るとそのうすものを、さすがに手荒いふうではなく物穏かに引剥ひきはいだ。
頼みにされている豊後介と、弓矢を持った郎党が二人、そのほかはしもべと子供侍が三、四人、姫君の付き添いの女房は全部で三人、これは髪の上から上着を着た壺装束つぼしょうぞくをしていた。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
壺装束つぼしょうぞく市女笠いちめがさをかむった彼女は、細い旅の杖も、右馬の頭が用意していた。心なしか生絹はえた美しい顔にやや朝寒むの臙膩えんじをひいた頬をてらして、いきいきとして見えた。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)