堅唾かたず)” の例文
咽喉のどかわいて引付ひッつきそうで、思わずグビリと堅唾かたずを呑んだ……と、段々明るくなって、雪江さんの姿が瞭然はっきり明るみに浮出す。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
この日もイエスはこの不具者を癒すであろうかと、悪意に満ちたパリサイ人は堅唾かたずをのんで様子をうかがっていた。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
私は、一時に四方の薄暗さと冷気が身にこたえる涼台の上で、堅唾かたずをのんで、報道を聞いた。どんな田舎の新聞でも、戒厳令を敷いたことまで誤報はしまい。
私の覚え書 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その通りに伴れて来たのを窓より見て王大栗を放たしむると、馬商も強齶を放った。堅唾かたずを呑んで見て居ると、二馬相逢いて傾蓋けいがい旧のごとしという塩梅あんばいに至って仲よく、互いに全身をねぶり合った。
理学士はこの時少年のいうことを聞こうとして、思わず堅唾かたずを飲んだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余はひそかに堅唾かたずを呑みしに彼れは全く打て変り
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)