四万しま)” の例文
旧字:四萬
私は幼いとき父に伴われて上越国境の四万しま温泉の奥の渓流へも、磯部鉱泉の碓氷うすい川へも、足尾銅山の方から流れてくる渡良瀬川へも釣りに行った。
利根川の鮎 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
警報隊長の四万しま中尉は、兵員の間に交って、いつもは東京全市に正午の時刻を報せる大サイレンの真下ましたに立っていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これは上州吾妻郡あがつまごおり四万しまの山口と申す所へ抜けてまいる間道で、猟人かりゅうどそまでなければ通らんみちでございますが、両人ふたりは身の上が怖いから山中さんちゅうを怖いとも思わず
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう三四里を歩いて四万しま温泉へ廻ろうか、それとも直ぐ中之条へ出て伊香保まで延ばそうかと二人していろいろに迷ったが、終に四万へ行くことにきめて、昼飯を終るとすぐまた草鞋を穿いた。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
これは四万しま温泉にI君と一緒に行った時、I君は、私のお湯にはいっているところを、こっそりパチリと写してしまったのです。横向きの姿だから、たすかりました。正面だったらたまりません。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
北の方は勿来関なこそのせき、西へ動いて東京から真北の那須、群馬県へ入って四万しま温泉のあるところ、それから浅間山、信州の諏訪の辺を通って静岡へ抜け、山梨県を包み、それからいよいよ南の方へ
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仕方がないから有金ありがねを小包にして身支度をし、おえいと丹三郎の死骸を藁小屋に投込んで火をけ、漸々よう/\裏手から落延びまして、四万しまの山口村へ身をかくして居ますと、因果と懐姙いたしてねえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
峰「貴方お癪にはなんでげすねえ四万しまてえ処がありますが、是から九里ばかりありますが、これは子供の虫と癪には覿面てきめんくってえのでみんな行きます、これは三日居ればどんな癪でも癒るてえますから入らっしゃいましな」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)