嚥込のみこ)” の例文
「そのほうは、とうとうわからずじまい。……なにしろ、一人で嚥込のみこんで腹を切ってしまったんですから、どうにも手がつけられない」
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
吾輩は実をいうとこの時に内心すこぶ狼狽ろうばいしたね。タッタ今歯で引抜いた黒い毛は、どこかへ吐き出すか嚥込のみこむかしてしまっている。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は生のキウリを噛りながらパンを頬張つてゐたが、妻の注視を享けると、食物が胸につかへてしまつて、嚥込のみこむことが出来なくなり、ギヨツとした。
川を遡りて (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
よし給え、君の言っていることは、僕には嚥込のみこみかねるね、一たいそれは憤恨かね、それとも自己侮蔑かね……僕には解らない……君は何かへ対して挑戦でもしていそうだ。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
小女こおんなが一度、右の千鳥女史とささやき合って、やがて巡査の顔を見い見い、二階に寝ていたのを起した始末。笑い掛けたのは半途でおさえ、噴出ふきだしたのは嚥込のみこんで、いやに静かな事よって如件くだんのごとし
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
グツと嚥込のみこむともち咽喉のどつかへた。
周章あわててその舌を嚥込のみこみ嚥込み眼をパチパチさせた。その顔を下から見上げた唖女はサモサモ嬉しそうに笑った。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はグイと唾液つば嚥込のみこんだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)