呻吟声うめきごえ)” の例文
旧字:呻吟聲
「ふん、難産の呻吟声うめきごえだ。はあ、御新姐ごしんぞうならしっけえ、姑獲鳥うぶめになって鳴くだあよ。もの、奥の小座敷の方で聞えべいがね。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暑い病室へ入って行くと、患者の呻吟声うめきごえがまた耳についた。お庄は老婦としよりに替って、患者の傍の椅子に腰かけた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ああ、苦しい。」と、女はもだえ始めた。ガランガランと石炭を機関の下に投げ込む音がする。平常ふだん気に留めなかった機関の呻吟声うめきごえはらわたの底に響くように耳に附く。
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は深い呻吟声うめきごえを上げながら、腕椅子に崩れるように腰かけて、手錠のかかった両手で顔を蔽うた。
「お先へ失礼しましたよ。何だか気分がわるいので」お島はそう言いながら、呻吟声うめきごえを立てていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そがなすままにまかしおけば、奇異なる幻影眼前めさきにちらつき、𤏋ぱっと火花の散るごとく、良人のはだを犯すごとに、太く絶え、細く続き、長くかすけき呻吟声うめきごえの、お貞の耳を貫くにぞ
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はかすかに目で食べないと答えたらしかったが、庸三が心持不味まずそうに食事をしていると、葉子はひりひりした痛みを感ずるらしく、細い呻吟声うめきごえを立て、顔をしかめた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
遠くで犬の吠ゆる声はするが、幸いどの呻吟声うめきごえも聞えずに、更けてかれこれ二時であろう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒸し暑いような、薬くさいような産室の蚊帳のなかから、また産婦の呻吟声うめきごえが洩れた。お庄と一緒に、そこいらの後片着けをしていた母親は、急いでその部屋へ入って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「いえ、全く、聞いたのは呻吟声うめきごえばかりで、見たのは繃帯ほうたいばかりです。」
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、全く、聞いたのは呻吟声うめきごえばかりで、見たのは繃帯ほうたいばかりです。」
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)