くちずさ)” の例文
妙子は床の上へ半身起き直って、覚束ない手付き乍ら、昔取った杵柄で、何んかをくちずさみ乍ら暫らくは器用に羽子はねを突いて居りましたが
強犯されて一首をくちずさむも、万国無類の風流かも知れぬが、昔は何国いずくも軍律不行届ふゆきとどきかくのごとく、国史に載らねど、押勝の娘も、多数兵士に汚された事実があったのを、妙光女の五百人に二倍して
と、乳母はいつもその三味線の節に合わせてくちずさんだ。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)