向山むこうやま)” の例文
西は西山、東は上野山、南は向山むこうやま、北は藤木山ふじきやまという山で囲まれている山間やまあいの村で、総名そうみょう本沢ほんざわと申して、藤木川、千歳川ちとせがわなどいう川が通っております。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かわは長く流れて、向山むこうやまの松風静かにわたところ、天神橋の欄干にもたれて、うとうとと交睫まどろ漢子おのこあり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この勢いのいい獣に比べると、向山むこうやまから鹿の飛び出した時は、石屋の坂の方へ行き、七回りのやぶへはいった。おおぜいの村の人が集まって、とうとう一矢ひとやでその鹿を射とめた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
事に寄ったら明日あしたの晩向山むこうやまへお嬢様を連れておいでなさい、あなた是非連れて来てください
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
監察向山むこうやま栄五郎のことが彼の胸に浮かんだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
めえの御亭主が脇差を抜いて追掛おっかける時に、私が打倒ぼっころんだ上へまたがって殺すべえとするから、一生懸命に人殺しい/\と云うと、其の時向山むこうやまを通り掛けたのは貴方あんたあにさんで、鹿を打遁ぶちにがしてけえみち
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)