吐瀉としゃ)” の例文
甚太夫じんだゆう主従は宿を変えて、さらに兵衛ひょうえをつけ狙った。が、その四五日すると、甚太夫は突然真夜中から、烈しい吐瀉としゃを催し出した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
太市は客の残りものを食べた中毒で、烈しい吐瀉としゃを続けながら医者にもかけることができず、僅か五日ばかりで骨のようにせて死んだ。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれども途中幾度か激しい吐瀉としゃに見舞われた豚は、自動車のある処まで来るととうとう動かなくなってしまいました。痙攣けいれんを起したんです。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
喰わず飲まず吐瀉としゃや呻きの中で三日を過ぎ、真暗な夜中に荷物のように投げ出されたのが、又北九州沿岸の方角も名も知らない山際だったそうである。
玄海灘密航 (新字新仮名) / 金史良(著)
「佐々木はあの家に帰るなり、はげしい吐瀉としゃを始めて三時間たたぬうちに死にましたわ。まるで夢のようねえ」
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
と、今の今まで思っていたが、どうしたわけか、私は、とつぜん、非常な眩暈めまいに襲われた。目の前がまっくらになった。そして、はげしい吐瀉としゃが始まった。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
途中の食中しょくあたりか何かであろう。春日山城へ辿りつくと、喜兵衛はひどく吐瀉としゃをして死んだ。謙信が
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日尾道を出発したところ、広島への途中汽車中にて妹ともはげしい腹痛が起こり広島に着いた時は吐瀉としゃはげしくやむをえず広島の親戚に三日間苦しい、いらだたしい日を送りました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
叔母はなにかの食あたりであったらしく、一時はひどく吐瀉としゃして苦しんだ。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれは夜半よなかから吐瀉としゃをはじめて、明くる日の午後に死んだ。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)