取捲とりま)” の例文
向うの囲炉裏を取捲とりまいてる連中も同じ顔に違いない。さっき坂を上がってくるとき、長屋の窓から自分を見下みおろしていた顔も全くこれである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水司又市は十方でぶう/\/\/\と吹く竹螺たけぼらを聞きまして、多勢の百姓共に取捲とりまかれては一大事と思いまして、何処どこを何うくゞったか
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
利藻氏と豆千代と、豆千代の可愛かあいがつてゐた三毛猫とは栖鳳氏の身辺まはり取捲とりまいて、じつと画の出来るのを待つてゐた。
煙突の多い王子のある会社などでは、応接室おうせつまへ多勢集って来て、面白そうに彼女の周囲まわり取捲とりまいたりした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
行つて見ると川向ふの岩の上には、まだ子猿が親猿を取捲とりまいて日向ボツコをして遊んで居ました。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「材木場を取捲とりまいた提灯が一度に海辺へ出たぞ、海へ何かほうりこむ音がするようだ」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)