はげま)” の例文
然レドモ人トリ気ヲとうとビ、厳峻げんしゅんヲ以テ自ラはげまス。すこぶ偏窄へんさくニシテ少シク意ニ愜カザルヤすなわ咄咄とつとつトシテ慢罵まんばス。多ク人ノにくム所トナル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それからの細君が一緒に東京へ帰つて呉れと言出した時に、先輩は叱つたりはげましたりして、丁度生木なまきくやうに送り返したことを思出した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ほかにも宋の朱泰貧乏で百里たきぎひさぎ母を養う、ある時虎来り泰を負うて去らんとす、泰声をはげまして我は惜しむに足らず母を託する方なしと歎くと虎が放ち去った
時とすると、妙な眩暈心地めまひごゝちに成つて、ふら/\と雪の中へ倒れ懸りさうになる。『あゝ、馬鹿、馬鹿——もつと毅然しつかりしないか。』とは自分で自分を叱りはげます言葉であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一人の屠手は赤い方の鼻面を確乎しつかおさへて、声をはげまして制したり叱つたりした。畜生ながらに本能むしが知らせると見え、逃げよう/\と焦り出したのである。黒い佐渡牛は繋がれたまゝ柱を一廻りした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)