イト)” の例文
もう此頃になると、山はイトはしいほど緑に埋れ、谷は深々と、繁りに隠されてしまふ。郭公クワツコウは早く鳴きらし、時鳥が替つて、日も夜も鳴く。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
 婦女子、老幼、病人等ハ可相成アイナルベクハ、近郷ノ縁類ヘ避難サレタシ。唯、ヤムナキ事情ノ者ト、トモニ死ヲイトワザル家族ノミハ、今夕七時迄ニ鎮台内ニ引揚ゲラルベシ
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郎女は侍女にすら、ものを言ふことをイトふやうになつた。さうして、昼すら何か夢見るやうな目つきして、うつとり蔀戸シトミドごしに、西の空を見入つて居るのが、皆の注意をひくほどであつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)