午砲ドン)” の例文
午砲ドンの鳴る頃、春桃は、いつもの通り屑籠を背負ってとある市場へ来かかった。突然入口で「春桃、春桃!」と呼びとめた者があった。
春桃 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
朝のおそい私だつたので、默つて差し向ひになつてゐる耳もとで午砲ドンがあわただしく鳴つた。多分もう歸へるだらうと思つてゐると、顏役は
蒼白き巣窟 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
この間からジリジリと燃えつまって来たのが、昨日の正午——すなわち大正十五年の十月の十九日の午砲ドンが鳴ると殆ど同時に物の美事に爆発したのだ……ナアニ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
結い了う頃は最う午砲ドンだけれど、お昼はおなかくちくて食べられない。「あたししてよ」、という。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「もうすぐに、午砲ドンじゃないか。そんな寝呆ねぼけた頭で外へ出ると、すぐに、御用になるよ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄暗いやうな空に午砲ドンこもツて響いた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
お察しの通りです。午砲ドンが聞えたら警察に自首して出ろ。その通りにしなければお前は生命いのちが危い。そうしてもしその通りにしたならばわたしがどこからか千円のお金を
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
十二時の午砲ドンを聞きますと同時に、鍬を投げ出して病室に帰って、サッサと食事を済まして、ゴロリと寝台の上に横になるところまで、五代前の儀十の生れ代りとしか思えませぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは午砲ドンであった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)