千紫万紅せんしばんこう)” の例文
しかもみな彩色さいしきの新版であるから、いわゆる千紫万紅せんしばんこう絢爛けんらんをきわめたもので、眼もあやというのはまったく此の事であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『君たちのやうな熱心家の為めにこしらへた雑誌だから、それに入会したまへ』かう言つて、『千紫万紅せんしばんこう』といふ雑誌の成規を添へてよこした。
紅葉山人訪問記 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
それからしばらくしてから『千紫万紅せんしばんこう』という新らしい名で更に発行されたが、この『千紫万紅』は硯友社よりもむしろ紅葉一個の機関であって
織り物をするところでは、輸出向きのタフタのようなものを、動力をつかった沢山のはたで織っているのですが、ここは千紫万紅せんしばんこう色とりどりに美しい布の洪水こうずいです。
繚乱りょうらん」と云う言葉や、「千紫万紅せんしばんこう」と云う言葉は、春の野の花を形容したものであろうが、ここのは秋のトーンであるところの「黄」を基調にした相違そういがあるだけで
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
不思議なかおりよりも、乳色に澱んでいる異様な空の色よりも、いつから始まったともなく、春の微風そよかぜの様に、彼等の耳を楽しませている、奇妙な音楽よりも、或は又、千紫万紅せんしばんこう
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あまり人は知らぬが、千紫万紅せんしばんこうつて、会員組織くわいゝんそしきにして出した者で、硯友社けんいうしや機関きくわんふのではなく、青年作家せいねんさくかためであつたから、社名も別に盛春社せいしゆんしやとして、わたし楽半分たのしみはんぶんに発行した
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)