北辰ほくしん)” の例文
馬琴としては区々世評の如きは褒貶ほうへん共に超越して顧みないでも、たとえば北辰ほくしんその所にいて衆星これをめぐるが如くであるべきである。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
北辰ほくしん一刀流の道場があって、この仕合を目あてに猛烈な稽古をはげんでいるかと思うと、下妻には、真庭念流まにわねんりゅうの先生がいて、これも筑波の奉納仕合を目前に
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一人がけわしい山谿やまあいかける呼吸で松の木に登り、桜の幹にまたがって安房あわ上総かずさを眺めると、片っぽは北辰ほくしん一刀流の構えで、木の根っ子をヤッと割るのである。
つまりこれが三位一体さんみいったいというやつ……それで病気というやつは、とりついたが最後、貴賤上下の隔てはねえ、北辰ほくしん位高くして百官雲の如く群がるといえども
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伊達家には北辰ほくしん一刀流の千葉周作が出稽古をしているが、本邸と品川とに、常雇いの師範が置いてある。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ある寺に北辰ほくしん妙見宮のまします堂は、森々しんしんとした樹立こだちの中を、深く石段を上る高い処にある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喜連格子きつれごうしの外へ寄って、堂の破れびさしを仰ぐと、北辰ほくしん石神というがくがあります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大関をはじめ神田お玉が池千葉周作先生の門弟が多いから、いずれも北辰ほくしん一刀流の使い手がそろっている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
自分の稽古を見られたこと、秋の総試合で千葉の北辰ほくしん一刀流と、自分のあみだした技とを、ぶっつけてみようと思った対抗意識が、そんなふうに考えさせたのであろう。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)