勤王きんのう)” の例文
いわゆる(二字不明)おおしで、新思想を導いた蘭学者らんがくしゃにせよ、局面打破を事とした勤王きんのう攘夷じょういの処士にせよ、時の権力からいえば謀叛人であった。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
この詩は、豪放磊落らいらくな三樹が、終天の恨みをこめ軍駕籠とうまるで箱根を越えるときに詠じたもの、当時勤王きんのうの志士たちは争ってこれを口ずさんでいた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
方孝孺堅くけいを守りて勤王きんのうの師のきたたすくるを待ち、事し急ならば、車駕しゃがしょくみゆきして、後挙を為さんことを請う。時に斉泰せいたい広徳こうとくはしり、黄子澄は蘇州そしゅうに奔り、徴兵をうながす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは意見の相違でぜひもないが、そちたち、勤王きんのうを名として、私藩の手先をつとむるような振舞があってはならぬぞ、幕府を倒して、第二の幕府を作るようなことになっては相済まぬぞ
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この輩が学者の本色ほんしょくを忘却して世変に眩惑し、目下の利害を論じて東走西馳に忙わしくし、あるいは勤王きんのうといい、また佐幕さばくと称し、学者の身をもって政治家の事を行わんとしたるの罪なり。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
勤王きんのうも面白かろう。佐幕もまた妙じゃ。が、しかしなあ、世のことおおむね理屈りくつではない。まわりまわって帰するところ、要するにこの身一個のやりくりだ。な、篁、そうではないか
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「よくある手で、近頃はどこへ行っても流行はやる、徳川の御用金だとか、勤王きんのうの旗揚げの軍備金だとか言って、ところの物持ちをゆするのだ、それがこの山奥までやって来ようとは思わなかった」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)