勝味かちみ)” の例文
しかし親しみということは上手じょうずという意味ではない。演奏も録音もハイフェッツの方に充分の勝味かちみのあることは言うまでもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ちょうどそこへ、ポルフィーリイがパウルーシカと一緒に入って来た。殊にパウルーシカというのは頑丈な若者で、こんな奴と事を構えては、全然勝味かちみがなかった。
かれらの目算もくさんでは、この一番こそ、うたがうまでもない勝味かちみのあるものとしんじているのだ。天下あゆむことにかけて、たれか、早足はやあし燕作えんさくにまさる人間があるはずはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦争でなくても、これだけの心尽くしの布片を着込んでで立って行けば、勝負事なら勝味かちみが付くだろうし、例えば入学試験でもきっと成績が一割方よくなるであろう。
千人針 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
甲州の人は、徳川家康を恐れない、我が信玄に十に九ツも勝味かちみのなかった家康を軽蔑せんとする、家康を恐れない人は、秀吉の重んずべきを知ることも極めて浅いのであります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は、その廻文のうちに、秀吉と戦って勝味かちみのない理由を、次のように、書いていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも勝味かちみがなかった、謙信は信長を呑みきっていた、信長はたえず威圧されて怖れていた、謙信が、いで北国人の手並を見せてくれんと、まさに兵を率いて京都へ来たらんとする時