前脚まえあし)” の例文
あしは太く、折から一員の騎兵の通り合せ候が、兜形かぶとがたの軍帽のいただきより、つめの裏まで、全体唯その前脚まえあしうしろにかくれて、わずかこまの尾のさきのみ、此方こなたより見え申し候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
突然水ぎわに走りよった奔馬が、そろえた前脚まえあしを踏み立てて、思わず平頸ひらくびを高くそびやかしたように、山は急にそそり立って、沸騰せんばかりに天を摩している。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
多分馬の前脚まえあしをとってつけたものと思いますが、スペイン速歩そくほとか言う妙技を演じ得る逸足いっそくならば、前脚で物を蹴るくらいの変り芸もするか知れず、それとても湯浅少佐ゆあさしょうさあたりが乗るのでなければ
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)