利刃りじん)” の例文
「汝、わが年の老いたるを笑うといえども、手の中の刃は、いまだ年をとらぬ。わが利刃りじんを試みてから広言を吐け」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あごのあたりに利刃りじんがひらめく時分にはごりごり、ごりごりと霜柱しもばしらを踏みつけるような怪しい声が出た。しかも本人は日本一の手腕を有する親方をもって自任している。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この女王様の第一の利刃りじんは軽蔑です。この女王は、ほとんどあらゆる現象に対して、この女王が発する最初の挨拶は軽蔑であって、最後の辞令も軽蔑でないということはない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
懦弱だじゃくにさえ見える範覚ではあったが、その実「棒」の一手にかけては、鬼神をあざむく使い手で、金環金筋で堅固に作った、金剛杖の一薙ひとなぎは、利刃りじんよりも凄く鉄才棒かなさいぼうよりも
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
霜をとかした流水がそのままったような、見るだに膚寒い利刃りじんである。刀を持った鉄斎の手がかすかに動くごとに、行燈のうつろいを受けて、鉄斎の顔にちらちらと銀鱗が躍る。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
青い火花が雨に散って、いつのまにさやを出たか、帰雁の利刃りじんが押して来る。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)