ひん)” の例文
ひんやりした蚊帳の色のすが/\しい青さに彳みながら、そこらへ出るにもあんまりな、鬢のあたりを掻き上げた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
ごく軽くて、滑々すべすべして、いい手触りだ。ひんやりとして……少し気味がわるい……何だか神秘な感じのするこの眠っている兇器は、短刀なんかとちがって、危険が外に顕われていない。
ピストルの蠱惑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
夜気ひんやりとしてきたこく過ぎ、更け沈んだ離室はなれの灯は、丁字ちょうじに仄暗く、ばさと散ったの翼から、粉々と白いものが新九郎の顔に降った——と、魔魅あやかしのすり抜けてくるよりも密やかに、橋廊下を
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この部屋は、これからでもひんやりしてゐていゝでせうね? 建前の工合でせうか。」と、おかみさんが仰る。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)