其為そのため)” の例文
旧字:其爲
なに遠慮ゑんりよをしねえでびるほどやんなせえ、生命いのちあやふくなりや、くすりらあ、其為そのためわしがついてるんだぜ、なあねえさん。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日けふはわざ/\其為そのためたのだから、いやでも応でもちゝに逢はなければならない。相変らず、ない玄関の方から廻つて座敷へると、めづらしくあにの誠吾が胡坐あぐらをかいて、さけを呑んでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
七人のしかつめらしい男が(私もその中の一人だった)態々わざわざ其為そのためにしつらえた「赤い部屋」の、緋色ひいろ天鵞絨びろうどで張った深い肘掛椅子にもたれ込んで、今晩の話手が何事か怪異な物語を話し出すのを
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)