兜首かぶとくび)” の例文
まことや「あんちおきや」の帝がこの日の大勝利は、味方の手にとつた兜首かぶとくびの数ばかりも、一年の日数よりは多かつたと申すことでおぢやる。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
兜首かぶとくび何級はだれだれ——と、手柄によって、あるいは食禄を増されるもの、あるいは賞与の品をもらうものなどがある。
だんまり伝九 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
元和げんな慶長けいちょう兜首かぶとくびを取って二百五十石、それ以来、知行が上ったことがない。式目しきもくおもてでは、士分しぶんの者三人を召抱えていなくてはならぬが、妻子五人が食べ兼ねるでのう。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「やむを得んな。なんとかして、ひとつでも兜首かぶとくびをあげんことには、行きだおれが出来る」
「戦場で兜首かぶとくびの代りに石を拾って来るほどの方ですものね」いかにも可笑おかしそうにみんなくすくすと笑いだした。
石ころ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「千坂どのは算盤そろばんで稼いだ」と云われたし、二回、三回と続けて留守城番を勤めたときには、「兜首かぶとくびの二つや三つより、千坂どのは留守役で二千石稼ぐ」
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「きっと兜首かぶとくびをとってみせる」とか、「一番槍の高名はおれだ」とか、「敵の本陣へ斬りこんで討死をする」とか、みんな軒昂けんこうたる意気で、生還を期せずと叫んでいるのに
一人ならじ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この戦で忠三郎は自ら兜首かぶとくび四級をあげた。なにしろ伊賀守の敗戦で、下手をすると大事に及ぼうとしたところを、わずかな手兵しゅへいで勝ちを制したのだからすばらしい手柄である。
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
兜首かぶとくびをあげるなんていばっていたが、こんどは自分の首が危ないじゃないか。
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)