)” の例文
「そうして見ると、わたしたちには親のかたきがありますね。いつかいさんと一しょにかたきを討とうではありませんか」といった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
喰はんでも、あんの相手をせいでどうならうに、少しや其の年になつたらわきまへさうなものぢやになあ……。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
或時おさま風邪気かぜけだといって寝ていらっしゃいました。下のお部屋です。そっと顔を出して、「いかがです」といいましたら、目くばせをなさるので、その方を見ますと、鳩が二羽来ています。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
まあ、いさん。お前はさぞせつない事で。3770
「ちよいと、おイさん」
いさま方が揃うておいでなさるから、お父っさんの悪口は、うかと言われますまい」これは前髪の七之丞が口から出た。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「誰れもそれを云うとりやせんがな。われがよく働いとるのは知つとるがな、そんでもあんがいろ/\わし等一家のことを思うて云うてくれるけえ相談して見るのぢやがな。」
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
まあ、いさんが。なんでわたくしにそんな事を。
まさか江戸時代の柳橋芸者の遺風を慕うのでもあるまいが、昨今松さんという絆纏着はんてんきいさんに熱くなって、お辰姉えさんの大目玉をい、しょげ返っているとはお気の毒
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
云ふけんど、若しやのことでもあつて見ろな、われがひよつとして病みわづらひでもして見ろな、力になつてくれる者ちうては、あんより外にあるまいがな、今だつて随分世話になつとることは知つとりながら何ちふ云ひやうぢやらう。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
牛込うしごめの保さんの家と、その保さんを、父抽斎の継嗣たる故を以て、始終「いさん」と呼んでいる本所の勝久さんの家との外に、現に東京には第三の渋江氏がある。即ち下渋谷の渋江氏である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)