停頓ていとん)” の例文
互にその仕事に熱中すれば一日中二人とも食事も出来ず、掃除も出来ず、用事も足せず、一切の生活が停頓ていとんしてしまう。
智恵子の半生 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
病人を外科へ移す相談が停頓ていとんしているのは、実際はこの老婆一人が「うん」と云わないからなのだそうであるが、幸子が来てからも、一方では父親と母親
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
時代に敏感な者はとかく浅薄になる、自分に固執する者は停頓ていとんしがちである。先生はそのいずれでもない。
西田先生のことども (新字新仮名) / 三木清(著)
が、光秀の前面は、ある程度で停頓ていとんを見てしまった。しかしそれは主隊として、ここで彼が絶対に粉砕ふんさいして見せなければならない——敵の牙城八上との対峙たいじであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互にその仕事に熱中すれば一日中二人とも食事も出来ず、掃除も出来ず、用事も足せず、一切の生活が停頓ていとんしてしまふ。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
要するにもっと早く調べて早く断ってしまっていたら、何でもなく済んだものを、ず幸子の所で停頓ていとんし、本家の手へ移ってからも決して迅速には運ばれていなかった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
停頓ていとんは意外だった。麾下きかの将士には理解できないことである。このへんを彼の戦下手という者はいうのだろう。古典「太平記」「保暦間記ほれきかんき」「梅松論」の諸書はその理由を
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸子はそれを受け取るまではつい忘れていたのであったが、そう云えば去年、ちょうど瀬越との間の話が停頓ていとんしていた十一月の末のる日、大阪の桜橋交叉点こうさてんのところで
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
命令もなし、何のために行軍が停頓ていとんしているのか、もちろん足軽組あたりには分らなかった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)