)” の例文
又ゆるやかにつゞくそのるい音は、それにつれて聞いてゐる者に次々ととりとめもない考へを追ひかけさせ、立ちどまらせ、又流れさせた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
昨日と同じいようにのんびりとるそうにしているのを二度も三度も見ているわたしであるゆえに、これも又物憂そうな目付でながめ込むのであった。
ヒッポドロム (新字新仮名) / 室生犀星(著)
アルコール中毒患者が、アルコールの気の感じないときは半死の状態にあるように、彼女等は一種の苦痛を伴ったぼんやりしたるさに苦しめられた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
何だか身体中が溶けるようにるくって、骨がみんな抜け落ちそうで、段々を一つ降りるごとに眼の前が真暗になって、頭の中が水か何ぞのようにユラユラして痛みます。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なんの興味もない、針の先ほどの刺激もない一日々々の中に、その身が浸つて居ることを思ふと、体も精神こころもげんなりしてしまつて、何も彼もすつかりれきつてしまふ。
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
彼女はまだるそうな目つきで、私を見るのだった。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
何となく身体がるかつた。それにちがひはない、今日は珍しく朝早くから川につききりで、おまけに呼びもどされるとすぐ今の騒ぎだつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
あの人にも罪に与からせようとして居る。この上に明らかな間違つたことがあらうか? この頃の二人のれ切つた生活も、私が心持の取直し様一つによつて救はれもする。
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
娘はそういうとなおしゃくり泣いて、父の肩にかけた手にちからを込めて、抱きついた。が、眠元朗は娘がそう遣ったときから、忘失してしまったようにからだ全体に重々しいるい悲哀をかんじた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その奥さんは四十あまりの、色の浅黒い眼の大きい、その眼は島の人に独特なで、どこか野生的な感じで、正代という身よりのない娘を相手にバタをつくることから一家の仕事をやっている。
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)