倦厭けんえん)” の例文
空想文学に対する倦厭けんえんの情と、実生活からた多少の経験とは、やがて私しにもその新らしい運動の精神を享入うけいれることを得しめた。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
強烈にわれわれを魅するということはないが、倦厭けんえんして、唾棄だきし去るという風景でもありません。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
血気の壮士らのやや倦厭けんえんの状あるを察しければ、ある時は珍しきさかなたずさえて、彼らをい、ある時は妾炊事を自らして婦女の天職をあじわい、あるいは味噌漉みそこしげて豆腐とうふ屋にかよ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
もちろん家に残した娘達への回避の念、物質本位の家業に対する倦厭けんえんの情は、いつもの通りくりかへして述べられた。たゞ、壁画についての羞恥しゅうちばかりは始めて老師の聞くところであつた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
禽獣きんじゅうに化して真の幸福を感ずるような人間は、神に最も倦厭けんえんせられます。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
紳士閥の批評家は屡々しばしば云う。民衆は自分の階級よりも上の階級のものを主人公とした小説や脚本でなければ喜ばない。富裕な社会の描写は民衆をして自分自身の貧困の倦厭けんえんを忘れさせるものであると。
空想文学に対する倦厭けんえんの情と、実際生活から獲た多少の経験とは、やがて私にも其の新らしい運動の精神を享入うけいれる事を得しめた。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
倦厭けんえんと、疲労とを催すに過ぎない。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)