作略さりゃく)” の例文
ああもしたらまだ活計向くらしむきの助けになるだろうとはたの者から見ればいろいろ忠告のしたいところもあるが、本人はけっしてそんな作略さりゃくはない
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古い油筒を花生にするなんというのは、もう風流に於て普通を超えて宗匠分になって居なくては出来ぬ作略さりゃくで、宗匠の指図や道具屋の入れ智慧を受取って居る分際の茶人の事では無い。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自然悠久の姿に於て見ようとする激しい意慾の果の作略さりゃくを証拠立てている。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
火事場に泥棒を働らくの格である。家庭的の女にもこのくらいな作略さりゃくはある。素知らぬ顔の甲野さんは、すぐ問題を呈出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしせっかくの切り出しようも泰然たる「はい」のために無駄死むだじにをしてしまった。初心しょしんなる文学士は二の句をつぐ元気も作略さりゃくもないのである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はつい覚えていた独逸ドイツことわざを返事に使いました。無論半分は問題を面倒にしない故意こい作略さりゃくまじっていたでしょうが。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何でもいいでさあ、——全く赤シャツの作略さりゃくだね。よくない仕打しうちだ。まるで欺撃だましうちですね。それでおれの月給を
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
病と臥せる我の作略さりゃくを面白しと感ずる者さえあろう。——ランスロットはようやくに心を定める。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)