余滴よてき)” の例文
考え込むと、深い吐息といきで、手に持つ猪口ちょくがフラフラと傾いて酒がこぼれそうになる。気がついてグッと呑んで、余滴よてきをたらたらと水の上に落して、それを見るともなく見つめて無言。
やがてみずから麺粉めんふん鶏卵けいらんを合せき居られしが、高橋も来りてこれを見て居けるうち、鶏卵の加減かげん少しぎたるゆえ、ぱちぱちと刎出はねだし、先生の衣服いふく勿論もちろん余滴よてき、高橋にも及びしかば
そしてなお余滴よてきまで舌なめずるごとく飲みほして、これを懐紙で一拭いっしき
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)