仇光あだびか)” の例文
透かした前途ゆくてに、蘆の葉にからんで、一条ひとすじ白い物がすっとかかった。——穂か、いやいや、変に仇光あだびかりのする様子が水らしい、水だと無駄です。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、てらてらと仇光あだびかる……姿こそ枯れたれ、石も点頭うなずくばかり、おこないすまいた和尚と見えて、童顔、鶴齢かくれいと世に申す、七十にも余ったに、七八歳と思う、軽いキャキャとした小児こどもの声。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中へ何を入れたか、だふりとして、ずしりと重量おもみあぶまして、筵の上に仇光あだびかりの陰気な光沢つやを持った鼠色のその革鞄には、以来、大海鼠おおなまこに手が生えて胸へのっかかる夢を見てうなされた。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
公子 冥土とは?……それこそ不埒ふらちだ。そして仇光あだびかりがする、あれは……水晶か。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)