人顔ひとがお)” の例文
旧字:人顏
人顔ひとがおのさだかならぬ時、暗きすみくべからず、たそがれの片隅には、怪しきものゐて人をまどはすと、姉上の教へしことあり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もうぼんやり人顔ひとがおが見える様に成って来るが、この霙の吹掛ふっかけでぱったりと往来は止まってるが、今にも渡しがいて、渡しを渡って此処こゝへ来る者が有れば、何でも三人だと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その顔がハッキリ分らないから、大噐氏は燈火ともしびを段〻と近づけた。遠いところから段〻と歩み近づいて行くと段〻と人顔ひとがおが分って来るように、朦朧もうろうたる船頭の顔は段〻と分って来た。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
爾時そのときも、早や黄昏たそがれの、とある、人顔ひとがおおぼろながら月が出たように、見違えないその人と、思うと、男が五人、中に主人もいたでありましょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)