人懐ひとなつこ)” の例文
旧字:人懷
「どうぞ、先生、お入り下さいませ。よくいらして下さいました!」打って変ったような人懐ひとなつこい態度で迎えた。
深夜の客 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
しかし乍ら、母親の記憶と云ふものを全然持ち合はせてゐないために人懐ひとなつこいところもあつたので、一面には他のどの兄よりも幾に親しんでゐたのも亦事実である。
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
竹に石燈籠いしどうろうをあしらった、本屋の土蔵の裏を、ずッと段を下りてくのですが、人懐ひとなつこい可愛い雀が、ばらばら飛んだり踊ったり、横に人の顔を見たり、その影が、湯の中まで
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青年ははにかであるが、その癖人一倍、人懐ひとなつこい性格を持っているらしかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
電車通りから少しはずれると、人通りの少い静かな道路がある。時々、そんな路を女はふらりと歩いていることがあった。路でばったりと彼と出逢うと、女はすぐ人懐ひとなつこそうに彼にいて歩いた。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
彼は人懐ひとなつこ笑顔えがおをしながら、そんなことも話していったものだった。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一体人懐ひとなつこいのにまた格別に慕ってくれますので、どうやら他人とは思えません。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)