京町きょうまち)” の例文
「図書係の京町きょうまちミチ子嬢。こちらは今日から入所された理学士古屋恒人ふるやつねと君。よろしく頼むよ」四宮理学士の声はほがらかであった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後下谷したや竜泉寺町に移った。俗に大音寺前だいおんじまえという場処で、吉原の構裏かまえうらであった。一葉の家は京町きょうまちの非常門に近く、おはぐろどぶ手前側てまえがわであったという。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
御承知の通り、高尾と薄雲、これが昔から吉原の遊女の代表のように云われていますが、どちらも京町きょうまちの三浦屋の抱妓かかえで、その薄雲は玉という一匹の猫を飼っていました。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あかりは水道尻のその瓦斯がすと、もう二ツ——一ツは、この二階から斜違はすっかいな、京町きょうまちの向う角の大きな青楼の三階の、真角まっかど一ツ目の小座敷の障子を二枚両方へ明放したうちに、青い、が
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京町きょうまちの角は取り分けて賑わっていた。またその混雑を面白いことにして、わざと人を押して歩く浮かれた男たちも多かった。その中には喧嘩でも売りそうな生酔いもあった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)