ちょっ)” の例文
「何うしたの? ……私が愛想を尽かすようなことッて。何か知らぬが、差支えなければ言って見たら好いじゃないか。」私はその時ちょっと胸に浮んだので
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
資本もとがあってする商売なら、何だって出来るさ。だけれど、ちょっとした店で、どのくらいかかるのさ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
此奴こいつ薄馬鹿うすばかだと思つたさうである。あとでの話だが——ちょっきつねいて居るとも思つたさうで。……そのいづれにせよ、此の容色きりょうなら、肉の白さだけでも、客は引ける。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ゆき子はちょっためらっていたが、思いきったように廊下を奥の方へ進んで行った。——と、右側に並んでいる小部屋(役者の化粧室)のひとつから、急にドアをあけて現われた男がある。
劇団「笑う妖魔」 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
処がその猫も、一度二日も続いて土砂降りのした前の晩、ちょっとのに何処へ行ったか、いなくなって了った。おっかさんと二人で種々いろいろ探して見たが遂に分らなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「とにかくちょっと逢った方がいいぜ。その上で、また善く相談してみたらどうだ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それにしても、他人ひととの間にちょっとでも荒立った気持でいるのは、自分には斯うじっと独りでいても、こらえられない。兎に角行って様子を見よう。自家にいても何だか心が落着かぬ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)