二途ふたみち)” の例文
「わしと一緒に死んでくれるか、それとも、名もない雑役夫のために、海に叩き込まれるか。その二途ふたみちよりないのだが……」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
今日こんにちの処は、長谷川町の番人喜助の続きとお話が二途ふたみちに分れますが、のちに一つ道に成る其の前文でありますからお聴きにくい事でございましょう、さて築地つきじ本郷町ほんごうちょう小田原町おだわらちょう
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それとも未来に対する自分の方針が二途ふたみちに矛盾してゐるのか、又は非常に嬉しいものに対して恐を抱く所が矛盾してゐるのか、——この田舎出いなかでの青年には、凡てわからなかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さりとては忌々いまいまし、一心乱れてあれかこれかの二途ふたみちに別れ、お辰が声を耳にききしか、吉兵衛の意見ひし/\とあたりて残念や、妄想もうぞうの影法師に馬鹿にされ、ありもせぬ声まで聞しおろか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)