久能谷くのや)” の例文
この久能谷くのやの方は、ちっ足場あしばが遠くなりますから、すべて、見得装飾みえかざりを向うへ持って参って、小松橋こまつばしが本宅のようになっております。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一先ひとまず帰宅して寝転ぼうと思ったのであるが、久能谷くのやを離れて街道を見ると、人の瀬を造って、停車場ステイション押懸おしかけるおびただしさ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小さい方は八ツばかり、上は十三—四と見えたが、すぐに久能谷くのやの出口を突切つッきり、紅白の牡丹ぼたんの花、はっとおもかげに立つばかり、ひらりと前をき過ぎる。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むねに咲いた紫羅傘いちはつの花の紫も手に取るばかり、峰のみどりの黒髪くろかみにさしかざされたよそおいの、それが久能谷くのや観音堂かんおんどう
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水の底を捜したら、かれがためにこがれじにをしたと言う、久能谷くのや庵室あんじつの客も、其処そこに健在であろうも知れぬ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書物かきものにも見えますが、三浦郡みうらごおり久能谷くのやでは、この岩殿寺いわとでらが、土地の草分くさわけと申しまする。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)