主殿とのも)” の例文
ふすまの音あらく、入って来たのは、忠右衛門とおもいのほか、市十郎にとっては、その養父より恐い実家の兄の大岡主殿とのもだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なつの実家である藤井家は代々の年寄役であり、当代の主殿とのもは筆頭の席にいるし、長女のはまは側用人の郷田靱負にしている。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人々は一二七木村常陸介きむらひたちのすけ雀部ささべ淡路、白江備後、熊谷くまがへ大膳、粟野杢あはのもく日比野下野ひびの(しもつけ)、山口少雲せううん丸毛不心まるもふしん隆西りうさい入道、山本主殿とのも、山田三十郎、不破ふは万作、かく云ふは紹巴ぜうは一二八法橋ほつけうなり。
一瀬主殿とのもも亦十津川の士で連坐せられ、八丈島に流され、後ゆるされて帰つた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
する、あるじの佐藤又左衛門、もと江戸家老だった庄野重太夫、これももと側用人そばようにん鵜沢帯刀うざわたてわき、ことによると現城代の村野主殿とのもも来るかもしれない
燕(つばくろ) (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「石川主殿とのも様の娘——おてるさんというたかの——書家の萩原秋巌はぎわらしゅうがん様の所で見かけたが、よい娘じゃ、学問がようできる」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主殿とのも取りてたかく吟じ上ぐる。
「ただ一目、兄上に会いたさ。兄上に会いたいばかりに、生きているのだ。亀次。わしの兄、主殿とのもの消息は知らないか」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相手は浜田主殿とのもという者の娘で、名をおぬひといい、三年まえから婚約ができていた。おぬひの病気で延びていたところ、ようやく医者の許しが出て、式を挙げたのであった。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
杉山主殿とのもなどとまるで男のような芸名をつけた遊女あがりの者が、男扮装おとこいでたちで、貴人の邸へも、出入りするのを見かけられるのも、近ごろの現象だった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叔父(玄蕃の弟で新庄へ婿にいっている)主殿とのもは云う。
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
声は、主殿とのもであった。すかさず、かれも直ちに雨の中へ飛び降り、ふたりの影の行くてに廻って立ちふさがった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「近頃、石川主殿とのもの娘をめとって、どんなに、納まっているのかと、今日も、道場で土肥のうわさをしていたのに」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば、江口の君たちには、中君なかのきみ主殿とのも香炉こうろ、小観音、孔雀などという佳人もおりましたが、近頃では、大江玉淵おおえのたまぶちの娘、白女しらめの君に及ぶものはありません」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「貴様が切らなければ、わしが切るぞ。嫁の里方たる石川主殿とのもへ、何と、顔向けができると思う」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)